原因のはっきりしない慢性腰痛に悩んでいるかたの中で、とくに朝、目がさめたときに腰が痛むという場合、原因は意外なところにあるかもしれません。それは“パンツのゴム”です。パンツのゴムが原因の腰痛には、おもに二つのタイプがあります。
第一のタイプは、やせ型の人に多く、股上の深いパンツをはいている人に見られるものです。パンツのゴムによる長年の締めつけで、この部分の皮膚にくい込んだあとがくっきり残っていたり、皮膚が薄くなっているような人は特に要注意です。パンツのゴムがちょうどウエストの高さに当たっており、この高さで背骨の両側を押すと痛みがあります。ゴムが当たるウエスト一帯にピリピリする感じや、つめの先でちょこっとこすっただけで痛がるなどの知覚異常を伴うことも多いようです。ウエストの高さは、背骨でいえば5個ある腰椎のうち第3腰椎にあたり、背骨の中を通っている脊髄神経から、後枝外側皮枝という神経が分かれて出ている場所です。この後枝外側皮枝がパンツのゴムで絶えず圧迫されているために、この神経が支配する背骨から脇腹にかけて腰痛が起こるのです。
第二のタイプは逆に太りぎみの人に多く、おなかやお尻が大きいために股上が浅くなり、腰骨にパンツのゴムをひっかけているような形ではいているため、この高さにゴムのあとがついています。同じ腰痛でもおしりに近い腰骨のあたり一帯が痛むというタイプです。背骨でいえば、腰椎のいちばん下の第5腰椎の高さになり、この位置を走っている上臀皮神経や腸骨下腹神経(※)がゴムによって圧迫されています。太っている分ゴムの締めつけも強く、これらの神経が支配するおしりから太ももの後面にかけて知覚異常や痛みを感じます。
いずれのタイプの腰痛にしても治療は簡単で、圧迫されている神経をパンツのゴムから解放してやればよいのです。パンツをはかずに生活するのが理想ですが、せめて夜だけでもパンツを脱いで眠るようにするのがおすすめです。裸で寝ることができない場合は、浴衣やゴムのゆるいパジャマなどを着るようにしてください。また昼間はゴムを引っぱってゆるめたパンツをはき、パンティストッキングはゴム編み部分の背中側に、ハサミで切り込みを入れておきましょう。これだけで早い人では1週間、おそくとも1~3カ月で腰痛が改善していきます。
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