いわゆる中年太りなどでおなかが出てくると、その体型の変化が腰痛の原因になることもあります。背骨は骨盤の上にのっていますが、骨盤はからだの前後で腹筋と背筋によってつり上げられています。中年太りになるとおなかがたるんで腹筋が十分に働かなくなるため、背筋に負担がかかるようになり、しかも腹筋が弱った分、背筋が骨盤の後側を引っぱり上げる力が強くなり骨盤が前傾を強め、その上にのっている背骨(腰椎)も、前方に強く弓反りになるのです。
こうした腰痛を解消するには、骨盤の前傾や腰椎のそりを減らし、背筋の負担を軽くすることが必要です。とはいえ、なにもむずかしいことはなく、通勤電車でつり革につかまるとき、ちょっとした動作を加えるだけでいいのです。つり革につかまり、膝の力を抜いた姿勢で10~15秒ほどお腹をへこませる要領で腹筋に力を入れ、一息休んではまた10~15秒力を入れるといった方法で3回繰り返します。3回1セットとして、電車が駅につくまでの間、無理のない範囲で何セットでも行ってみてください。そのとき、下腹部に力を入れてお腹をへこませ、おへそを天井に向けるつもりで行うのがコツです。この簡単な動作で、骨盤の前側を腹筋によって引き上げ、腰椎のそりを減らすことができます。
(筑波技術大学保健科学部教授 森山朝正)